飛行機のリコンファーム。

昔は、海外旅行の際、帰国便のリコンファーム(予約の再確認)というのが必要でした。 もしツァーで行くならツァー会社が処理してくれますでしょうが、私のように個人旅行で海外に行く場合、自分での作業が必要でした。

(2024年現在、メジャーな航空会社の大半はリコンファームは不要になっています。)

リコンファームとは、帰国の3日前までに、これから乗る帰国便の航空会社に電話をかけて、

自分の名前、搭乗日、帰国便の便名を伝え、「私はその便に乗りますから!」という意志を、先方に表明することで、予約を再確認していただくという内容になります。もし、これをしないと、「この人は搭乗の意志なし」とみなされて、自分の帰国便がキャンセルされてしまう!です。

また、この時の電話のやり取りで、その帰国便が、まれに、出発時刻の予定変更があったりすることもわかります。

リコンファームのため、「外国で(英語で)電話をかける」、は、私には毎回、どきどきするところありました。

ひとりで旅行しているのですから、自分で何とかしなくてはなりません。

ある時。ウィーンの公衆電話から、SAS(スカンジナビア航空)に電話をかけました。 そして、自分の名前、搭乗日、帰国便の便名を告げて、リコンファームをお願いしました。

電話口に出た相手はわかりやすい英語で手早く確認してくれて、「あなたの予約は再確認されました。」と言い、電話は切れました。

外国に行く度、旅程の日にち半分まできたあたりで、早めにこのリコンファームの電話をかけていました。

どの国にいっても、このリコンファームの電話をすませれば、私は帰国便に乗って日本に帰れる、と、ホッとする気持ちになりました。

ところが。

インドではこの勝手が違いました。

昔の話です。

インド人の友人がいる南インドの町に滞在していた時。

あと1週間で帰国だから、リコンファームをしなければならない、、という状況です。

この町の住民は、家電話を持っている家はまずいなくて。

砂ぼこりの多い通りに1軒。「電話屋」がありました。掘っ建て小屋のような20㎡くらいの店の中に、3台ほど電話機がおいてあって、、

お客が来たら、電話番号が書いている紙を店主に渡す。店主がそこに電話をかけて、先方に通じたら、お客が受話器を受け取り、通話が始まる。 数分の通話が終わったら、店主がお客に電話料金を伝えるので、お客はお金を払って出ていく。

こういうシステムです。

当時、日本ならまずどこでも家に電話がある生活ですから。

この南インドにある「電話屋」はとても興味深い場所でした。

いつもお客が何かしら並んでいて、会話していました。「電話屋」は繫盛していました。

私は、帰国便のリコンファームのため、この電話屋に来れば、エアインディアに電話をかけられるでしょう。そんなに難しくはないはず。。

ところが、同じホテルに泊まっていて仲良くなったオーストリア人女性に聞くと、「エアインディアのリコンファームは電話ではだめだ」、というのです。

えええ。じゃあどうするの?

それで、翌日、そのオーストリア人女性に連れられて、その町の旅行会社に連れていってもらいました。 やはり20㎡くらいの広さの掘っ建て小屋のような「オフィス」

きついまなざしの30歳くらいのインド人男性2人が働いていて。土誇りが混じっているかのような、定番の茶色系のシャツ、茶色のズボン、足はサンダル。こういう人たちが働いていて。

私の連れのオーストリア人女性が、彼らに、エアインディアのリコンファームについて英語で聞きました。

すると、彼らはコテコテの(Rの発音が巻き舌できつい。)英語で答えました。

「こちらで、あんたたちのパスポートとエアチケットを預かって、それを、俺たちが、○○○(空港がある町の名前。この場所から100km離れている。)まで持っていって、エアインディアのカウンターに出して、確認してもらって、エアチケットにハンコを押してもらうと、それがリコンファームになるんだよ。 で、料金は○○○かかるよ。」

えええええ。パスポートとエアチケットをこの人たちに預けるですって!?

私は驚愕しました。それはこわい、、、

エアインディア、ありえない、、電話でのリコンファームができないってどういうこと、、、、、

外国に出たら、パスポートは自分がこの世のどこの人であるかを証明する命綱です。そして、帰国便のエアチケット(当時)だって、どれだけ重要なことか。。

それを、見ず知らずのこの人たちに預けて大丈夫なの???

そして、インド人のこの説明を聞いていた、オーストリア人女性は、「やっぱりそういう方法なのね。。」とぶつぶつ言っていました。

その後少したってから、もう一人の男性(20歳くらい)のインド人男性がこの「旅行会社」に入ってきました。 オフィスの入り口に車のキーを置いて。

彼が布袋から取り出したものを、私とオーストリア女性は、はっ、として見ました。

それは、20冊ほどの色とりどりの各国のパスポートと、その逐一に挟んであるそれぞれの帰国便のエアチケットでした。

それを見せてもらうと、エアチケットの所に、Reconfirmed ((予約の)再確認済。)の赤い丸いハンコ(直径2.5cm程度)がべったりと押されていました。

なぁるほど!これで、エアインディアからリコンファームされた、という印になるわけね!

そして、ほどなく、そのパスポートとエアチケットの持ち主とおぼしき人々が現れていき、名前と国名を言っては、その人のパスポートとエアチケットが本人の手に戻っていきました。

うーん。。。

確かに、、自分だけでここから100km先の町までタクシー頼んで、空港まで行ってリコンファームしてくるのは1日かがりだしなあ、、この人たちに頼むほうがいいかもしれないなあ、、、

それで、またその翌日、友人のオーストリア人女性と一緒に、自分たちのパスポートとエアチケットを、この旅行会社の人に渡し、リコンファーム代理料金としていくばくかお金を払いました。

「明日になったら来て。午後3時くらいなら戻ってきているから。大丈夫。」

預かり証はなし。領収書は手書きの簡単なもの。

このインド人のアバウトさが不安。。。。。

彼らの言う「ノープロブレム(問題ない)」は、日本語にしたら、「そんなの大丈夫だよ。」という意味になりますけれど。。

インドを旅行していて、「(どんなに問題があろうとも)、自分の言うことはそれで良い(あなたの言うことは全部間違っている)」、という意味でも「ノープロブレム」は使われれるたりもするので、相手の都合よいように巻き取られないように、注意しなくてはと、気持ちがぴりぴりする時はありました。(自衛のため、インド旅行中ではこれは必要だと思います。 )

そして。。

翌日午後3時。友人のオーストリア人女性と一緒に、この旅行会社にちょっとどきどきしながら行きました。

その空港まで車で行く役をしている20歳くらいの青年は、この時、もう会社に戻っていて。何やら清涼飲料水を飲みながら、机に足を投げ出してくつろいでいました。(オイオイ、一応、ここお客さんが来る場所でしょお?^^;))

20歳インド人青年「あっ、昨日の人たち。リコンファーム行ってきたよ。」と人懐っこい笑顔で言いました。

そして、彼は無造作に机の上に置いた、砂埃のついた布袋から、エアチケットをそれぞれ挟み込んだパスポート20冊くらいを輪ゴムで止めてあった」のを、わしづかみして取り出し、「で、あんた、名前と国はどこ?」

私は名前と日本からだ、と言うと、エアチケットが挟まれた赤いパスポートの中に書いてある名前と確認してから手渡してくれた。確かに!エアチケットに赤いハンコ「Reconfirmed」がべったり押してある!おおお。

それから、友人は、「オーストリアから。名前は、、」というと、インド人青年は、茶色のパスポートを探し出して、中身の名前と合っているかを確認してから、手渡してくれた。友人のエアチケットにも「Reconfirmed」があった!おおお。大丈夫だあ!

インド人青年。「それでいいよね。じゃバイバ~イ!」と、また飲みかけの清涼飲料水を口に含みくつろぎモードに。

私とオーストリア人の友人は、自分たちのパスポートとエアチケットがリコンファームをすませて無事に戻りほっっっ、としました。。

砂埃の舞う通りを、そそくさとホテルに戻りました。

その一週間後。

ボンベイ空港。

エアインディアのカウンター。茶系のサリー姿の窓口係員に、私の赤いパスポートと赤いリコンファーム済のハンコがついたエアチケットを手渡す時も、ちょっとどきどきしました。

この赤いリコンファームのハンコは、私からしたら、これが通用するのかどうか危ぶむような気持ちもあったので。(インド旅行により鍛えられ、私もどれだけ疑い深い性質になっていることか。笑)

カウンターの女性は何の愛想もなく、お仕事をサクサクすすめ、私のエアチケットは何の指摘も受けないまま、座席指定のチケットを渡され、また、トランクを預けて、、 チェックインは何事もなくうまくいきました。ありがたかった。。

ということで、リコンファームだけでも当時のインドではドラマがありました。

今なら、世界中、各自が携帯電話を所持している時代ですから、昔、南インドのある町の「電話屋」がビジネスとして成立していた状況には、隔世の念があります。

一方、2024年現在でも、エジプト航空、モンゴル航空、南アフリカ航空などは、今でもリコンファームが必要だそうです!楽しみですね~ふふ。

お付き合いくださりありがとうございました。