ある日。
私は、インド国内線の旅客機に乗り込んだところでした。
軽いショルダーバックひとつを身体に袈裟懸けにかけて。(安全のため、バックは身体の前側に。)
持っていたチケットの半券(昔の話なので、紙です。)を手にしていて、自分の席を探しました。
機内には、すでに、多くのインド人が乗り込んでいます。
ブルーや黄色といった、カラフルなターバンを頭に巻いているシーク教徒のふくよかなおじちゃんたち。(あのターバンの中身は、一生切らない髪の毛が全部入っています!)
白いシャツに茶色のズボンの若い細身の男性。
様々な色合いのサリーを着た年齢様々な女性たち。
5歳くらいの女の子を連れた20代後半の若い夫婦。女の子は大きな黒い瞳がぱっちりしていて。ビンディという眉間に丸い赤の印をつけている。パンジャビ・スーツという、Aラインのワンピースの中に同じ布地のゆったりしたズボンをはいて、肩にはそれと同じ布のショールをかけている服装です。若いお母さんも、同じようなパンジャビ・スーツのスタイルです。
こういうインド人が搭乗していてがやがやした機内に迎えてくれるのは、簡素な薄こげ茶色のサリーを着た客室常務員方でした。彼女たちは、乗客が、彼らの手荷物をちゃんとオーバーヘッド・ストレージ(頭の上にある荷物入れ)に入れているか、、高齢でそれがむつかしい人を手助けしたり、、きびきびした感じです。
私は、右側の翼の近く。窓際の自分の席を見つけ、そこに座りました。
席に座れて、ほっ、としました。やれやれ。
これで、次の目的先まで、この飛行機が無事に連れていってくれるでしょう。
幸い、私の隣の席は空席らしく、一人で悠々と過ごせそうです。
機内に搭乗するインド人乗客が、みなそれぞれの席に着席しました。
客室乗務員は、通路を歩きながら、乗客がちゃんとシートベルトを締めているかを確認していきました。
客室乗務員のアナウンス「搭乗ありがとうございます、、」が早口のヒンディー語→英語でさっさとすまされて、「安全のために」のアナウンスも行われました。
さて。あとは、出発です。
機体がゆっくり動き始めました。
私の右側窓から、午後の空港の光景が見えます。カンカン照りの日差し。
このままゆるゆるとした走行をして、滑走路からいきなり加速して、離陸していくでしょう。。
、、と思っていたら、機体がいきなり、ぶすっ、というように不自然にストップしました。
たぶん50mも進んでいないのでは?
あら? 何が起きたの?
何のアナウンスもありません。
そのまま機内の椅子に座って待っています。
乗客方は特に何も反応していません。新聞読んでる人がいたり。子供あやしている人がいたり。普通の状態です。
私は自分の席の右側窓から、何が起きているのかをのぞき込み、事態を確認しようとしました。
すると、、
整備の人らしき服装の人々数人が、機材を持って、こちら機体のほうに歩いてくるのが見えました。
彼らは、機体のどこかにもぐってしまうようにして、私の視界からは消えました。
そのまま15分、、20分、、30分経過。
アナウンスはありません。
乗客は誰もあわてていません。普通の感じでくつろいでいます。
整備らしき人々は「やれやれ」というように戻ってくるのが見えました。
それからほどなく、「僧侶」らしき服装の数人の人々がやってきました。
彼らの姿は、肩まであるもじゃもじゃの髪の毛。印象的なのが、額に描かれてあるTの字のような形の白い太い線。生成りの衣。足にはサンダル。きっと、ヒンドゥ教の僧侶。
この人たちが、何やら右手を上げて、機体を祝福したり、何かお経のようなものを熱心に唱えている感じがありました。
私がおもうに、
「人間のできるまでの整備は、この飛行機には施したけれど、あとは、神様、この飛行機を安全に飛ばしてくださいね。頼みますよ。それができるのはあなただけですから。私たちは神様を頼りにしますよ。 」
というお祈りだったんでしょう。
えええ。
まさか。
これが日本なら、機体に何か異常事態が発生したとわかったとたん、乗客は降ろして、別の安全確認がとれているだろう便に乗り換えさせるのではないかしら???
私は、インド国内で飛行機での移動を何度もしてきましたが、「飛行機が滑走路に行くまでの途中で止まり→ 整備後→ 僧侶のプージャ」までを目撃したのはこれが1回こっきりです。
これが珍しいことなのか? どうなのか?
私の頭の中で、「???」が起きました。
ともあれ。
そのあと、機体は、僧侶からのお祈りと祝福を受けて、またそろそろと動き出し、、
今度は、滑走路で、無事に加速ができて、、、離陸できて、、
そのあと、無事に、目的地に着くことができました。
(私も、神様に、この機体を無事に目的地まで着かせてください、と、思わずお祈りしました。)
パイロット方、客室乗務員方、機体作った人たち、整備の人、といった人間側もすごいけど、やっぱり、インドは「神様がいる(あてになるのはやっぱり神様。)」が普通の感覚の国であり。
なので、
この機体の異常が、ありがたいことに離陸前にみつかったこと、また、整備後、危なっかしいところがあったかもしれなくても、無事に目的地までつかせてくれたのは、インドの神様でしょう、本当にありがたいと思いました。
日本にも、「人事を尽くして天命を待つ」ということばがあります。
人間が自分のできることをしたら、後は、天にお任せ。
自分は自分のわかる範疇のことしかわからないが、
天から見たら、自分を含めた、全体のことが見えているわけだから、その配剤を信頼していたらよい。
自分の望みがその通りになるかもしれないし。
あるいは、それ以外の展開になるかもしれない。
それは神様にお任せで良い。
このあたりは、ニュアンスは違うかもしれないですが、似たような部分はあるのかもしれないですね。
今日もありがとうございます。